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気づくと大きな体育館のような場所のなかにいて、足の裏にはワックスの塗られたフローリングのつるつるした感触を感じる。目の前のスクリーンでは映画が上映されていて、でもさっきから真っ黒な画面が続いている。それがあまりにも深い暗闇なので、この体育館にはもしかして、私ひとりしかいないのではないかという恐怖を感じる。だから大声を出したり走り回ったりして、周りの存在を確かめようとしてみる。すると、暗闇からひそひそ声やくすくすと忍び笑いが聞こえて、あぁ他にも何人か人がいるのだと思い、少し安心する。 スクリーンでは相変わらず暗い場面が続いていて、誰かがささやくような、深くため息をつくようなくぐもった音が聞こえる。一瞬かすかな光が画面上に現れて、そして私は彼女を見つける。彼女はフローリングの床に寝転び、頬杖をついたままスクリーンを見つめている。私がそのかすかな光の中で彼女を見つけることができたのは、その鮮やかに染められた赤い髪のせいだ。それは彼女の白い肌にとてもよく映えていて、細く整えられた眉と相まって、彼女はまるでマレーネ・ディートリッヒみたいだ。 彼女は前から私のことを知っているみたいに、魅惑的なやり方で私に手招きをする。近付くまでは分からなかったが、近くにきて彼女の隣にひとりの40代後半に見える男が座っているのに気づく。もしかしたら、彼女は娼婦なのかも知れないなと思う。しかし男は客ではなく、このパーティーの主催者である様子だ。彼の合図で画面が変わり、スクリーンは一転して目に痛い原色の万華鏡が映し出される。 あぁ、だんだん頭がはっきりとしてきた。この体育館のような場所に入る前に、渡された錠剤を飲んだんだった。ケミカル系のモノは試したことがないし詳しくは分からないけど、エクスタシーのようなものだって説明されたんだった。 ハレーションを起こしそうな色彩の氾濫の中で、赤と黒の髪をした女の子が踊っている。短く黒い髪をしているのは私だ。ふたりとも血の気のない真っ白な顔をして、マネキンみたいに見える。彼女は赤い髪を揺らして私に微笑みかける。人工的に作り出された興奮が彼女の眼を斜視気味に見せていて、その眼には目の前にいるはずの私が映っていない。彼女の眼球はお互いをどんどん離れて、交差した視線は定まらず、目の前の彼女の眼に映るどこか遠くの知らない景色の中で、私が手を振るのが見えた。 この体育館に来る以前、私にはどのような生活があったのだろう。家族や友人、もしかしたら恋人なんかもいたんだろうか。きっとそこへはもう戻ることができないのだろう。私は全てを捨てて、ここに来ることを選んだのだ。どっちにしろ、それは幾分遠い道のりで、帰ろうにも私には帰り道が分からない。
by erimeri1204
| 2009-05-01 02:09
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